2025年7月26日、全道主要書店で発売!

 

クリル・フロラダイアリー

―千島列島植物探訪記

高橋英樹/著

定価2,200円(本体2,000円+税10%)
A5判並製・オールカラー
154ページ
ISBN 978-4-906740-69-7 C0045

北の秘境・千島(クリル)列島を往(ゆ)く
国際調査で巡り会った植物(フロラ)と島の自然

  • 東西冷戦の雪解け期にあたる1995~2000年にかけて、日米ロが参加して行われた「国際千島列島調査IKIP(アイキップ)」。この学術調査に4回にわたり参加した、現北海道大学名誉教授で植物分類地理学者の著者が、130日余りの調査の日々を、当時の日記をベースに多数の写真を交えて振り返った探訪記。
  • 千島独自の植物や美しい自然、日ロが刻んだ歴史の痕跡、独自の植物や美しい自然など、北の秘境・千島列島の実像を多数の写真を交えて各島を紹介。巻末には、千島全島の地図と地理・植生の解説、千島列島産の植物などの資料も収載しました。
  • 今では足を踏み入れることが難しい北の秘境・千島列島の実像を、あなたも体感してみませんか?

誌面

▼本文扉ページ


▼目次ページ


▼千島列島地図と各調査ルート図を掲載


▼豊富なカラー写真で各島を紹介




▼巻末の付録では、千島全島の地図と地理・植生を解説


▼巻末の付録では、北海道では見られない千島の植物を紹介

前書きなど

1991年(平成3)にソ連が崩壊すると東西陣営の融和は一気に進み、95年前後から千島列島におけるロシアとの国際共同調査が盛んに行われた。その中で最も早い時期に行われた国際共同調査の一つが、95年から2000年にかけて行われた日・米・ロ三国共同による生物多様性解明のための国際千島列島調査 International Kuril Island Project(通称 IKIP〔アイキップ〕)だった。
本書はこの調査に計4回、延べ100日以上参加した、一日本人植物学者の記録である。夏の深い海霧の中、千島列島を北へ南へと彷徨した記録だが、古い野帳を見直し、昔の記憶を手繰り寄せながらまとめたもので、私の「クリル・ダイアリー(千島日記)」ともいえる。
内容は、1995年、96年、97年、2000年の夏ごとに行われた千島列島調査を対象とし、日を追って記した計4回の日誌記録(ダイアリー)となっている。自然景観や植物、調査風景といった写真記録のほか、年ごとの調査船の移動ルート図も掲載したので、これらと対照しながら読み進めてほしい。
また、文中で上陸している島が、中千島なのか北千島なのか、同じ中千島でも南千島(北方四島)に近いのか、北千島に近いのか、といったことも意識して読み進めると、より理解を深めることができるだろう。そのために文中に出てくる島名には、本書に掲載した「千島列島と周辺地図」(6頁)の番号を付した。さらに巻末には、千島列島それぞれの島の地理や植生の大要、特徴的な植物についての資料を掲載したので、こちらも参照いただきたい。
本書の中を行ったり来たり「彷徨」することで、北海道東北部の海上にある北方四島の東から、遥かカムチャツカ半島まで、長く連なる千島列島の一島一島を身近に感じてもらえたなら、これに勝る喜びはない。同時に、国際共同調査やフィールド調査の意義や、その難しさ、楽しさにも思いを馳せてもらえれば幸いである。(「はじめに」より)

国際千島列島調査とは

国際千島列島調査IKIP(アイキップ)は、ロシア科学アカデミーの調査船により千島列島を巡航する形で行われた。千島列島すべての島における生物多様性を明らかにすることを調査の目的とし、毎年米国から10名、ロシアから15名、日本から5名ほどの生物分類学者が参加し、魚類・昆虫類・クモ類・軟体動物(貝類)・植物などを調査対象の生物とした。
島での調査は、沖合に停泊した調査船から縄梯子を伝って、定員20名ほどの上陸用の木製ボートに乗り移って海岸近くまで移動し、さらに定員8名ほどのゴムボートに乗り移り、岩礫海岸や砂浜に上陸していく。
島内では隊員各々が、調査対象により単独あるいは少人数で行動した。上陸地点周辺に昼食用のベースキャンプが設けられたが、戻るか否かは調査隊員次第だった。ただし、夕方には全隊員がベースキャンプに戻り、沖に停泊している調査船にボートを乗り継いで帰還することが義務づけられていた。
当時はロシアの経済危機が進んでいたこともあってか、調査研究費の多くは米国の国立科学財団が拠出したようで、ロシアの科学アカデミー極東支部が調査船による野外調査全般のロジスティクスを担い、日本からは科学研究費の補助により研究者5名が参加した。野外研究や調査後の研究報告・成果発表は、三国共同で行った。

著者プロフィール

高橋英樹(たかはし・ひでき)
1953年(昭和28)年群馬県高崎市生まれ。1976年東北大学理学部卒業。1981年東北大学大学院理学研究科博士課程修了、北海道大学農学部附属植物園助手、助教授を経て、1999年(平成11)北海道大学総合博物館教授。現在、北海道大学名誉教授。理学博士(東北大学)。専門は植物分類地理学および植物形態学。主著に『千島列島の植物』(北海道大学出版会、2015)、『サハリン島の植物』(北海道大学出版会、2024)がある。そのほか、『北大樺太研究の系譜─サハリンの過去・現在・未来』(共編、北海道大学総合博物館、2006)、『北大千島研究の系譜─千島列島の過去・現在・未来』(共編、北海道大学総合博物館、2007)、『マキシモヴィッチ・長之助・宮部』(編、北海道大学総合博物館、2010)、『クラーク博士と札幌の植物』(共編、北海道大学総合博物館、2012)、『ランの王国』(編著、北海道大学出版会、2016)、『花粉学事典』(分担執筆、朝倉書店、1994)、『日本絶滅危機植物図鑑レッドデータプランツ』(分担執筆、宝島社、1994)、『高山植物の自然史─お花畑の生態学』(分担執筆、北海道大学図書刊行会、2000)、『北海道の湿原と植物』(分担執筆、北海道大学図書刊行会、2003)、『レッドデータプランツ─絶滅危惧植物図鑑』(分担執筆、山と渓谷社、2003)、『新しい植物分類学Ⅰ』(分担執筆、講談社、2012)など。