2017年12月1日、全道書店で発売!

 

北海道 地図の中の廃線
―旧国鉄の廃線跡を歩く追憶の旅

堀淳一/著

本体6,000円+税
A5判上製オールカラー
448ページ
ISBN 978-4-906740-30-7 C0026

廃線歩きの元祖で知られる地図エッセイの名手、最後の書き下ろし作品

  • 『地図の中の札幌』『北海道 地図の中の鉄路』に続く、珠玉の地図エッセイ三部作がついに完結! 道内旧国鉄の廃線直後に著者が歩いた、全28線の廃線跡歩きの記録がここに蘇る。
  • レールの残照に慨嘆し、廃墟の風景ならではの寂寞感に身を震わせた日々を、のべ220枚の新旧地形図とともに追想。刊行直前に急逝した91歳の著者、最後の書き下ろし遺作。
  • さらに各路線に駅名一覧を付し、駅名の由来も併記。復刻版「北海道鉄道地図」(昭和37年、札幌鉄道管理局)と特製リーフレット(書き下ろし自伝エッセイ、略年譜、著作目録収録)を特別付録にした、地図&鉄道&堀ファン垂涎の保存版!


「鉄道への郷愁と憧憬を伝えてやまない」

―――芦原伸(紀行作家「旅と鉄道」統括編集長)

刊行に寄せて

廃線跡歩きは、失った記憶を取り戻す“冒険”だ

北海道の鉄道はピーク時の4100kmから、現在残るのは2430km、ほぼ40%の鉄路が廃線となった。モータリゼーション、過疎化、高齢化の波は全国変わらぬが、こと広大な北海道はそれが加速しつつある。
湧網線、天北線、標津線、深名線など懐かしい路線はすでに消滅し、ふたたび戻ることはない。「廃線跡歩き」の元祖である筆者は、それら消えた路線の跡を歩く。あるときは雨に濡れ、ある時は雑草をかき分け、ある時は突然キタキツネに遭遇しながら……。
廃線跡歩きは、失った記憶を取り戻す“冒険”でもある。草むした野に廃墟となった駅を見つけ、筆者は青春の思い出にふける。列車に乗っていれば瞬時に去る風景だが、ひとり歩きの風景はより鮮明だ。イタドリ、ギシギシなどの野辺の雑草、白樺、ミズナラ、ハンノキなどの樹影、幾色にも変化する大きな空を眺めながら……。
旅の追憶は筆者の息づかいとともに鉄道への郷愁と憧憬を伝えてやまない。

―――芦原伸(紀行作家「旅と鉄道」統括編集長)


●あしはら・しん…1946年生まれ。紀行作家、ジャーナリスト。北海道大学文学部卒。週刊誌記者を経て1972年、鉄道ジャーナル社に入社。1976年、フリーランスとして独立し、企画創作集団「グループ・ルパン」を設立。現在は「旅と鉄道」「SINRA」を発行する株式会社天夢人会長。日本ペンクラブ、日本文藝家協会会員。主な著作は『被災鉄道~復興への道』〈第40回交通図書賞受賞〉(講談社)、『へるん先生の汽車旅行』(集英社)、『鉄道おくのほそ道紀行』(講談社)、『60歳からの青春18きっぷ』(新潮新書)など多数。

各線の新旧地形図をふんだんに掲載

廃線前と廃線後の変化がひと目でわかるように、著者秘蔵の戦前の地形図をふんだんに使用。

▲戦前の20万分の1地形図に見る瀬棚線

▲廃線後の20万分の1地形図に見る瀬棚線

全路線の駅名一覧と駅名の由来を掲載

全28路線それぞれに駅名一覧を掲載。開業年や廃止年などの履歴に加え、駅名の由来まで記載しました。




目次

はしがき
旧国鉄道内廃止路線図

Ⅰオホーツク海斜面
1 天北線
2 興浜北線
3 興浜南線
4 名寄本線
5 湧網線
6 根北線
7 渚滑線
8 相生線

Ⅱ太平洋斜面と根室海峡斜面
1 標津線
2 白糠線
3 旧池北線(北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線)
4 士幌線
5 広尾線
6 富内線
7 胆振線

Ⅲ日本海斜面と津軽海峡斜面
1 羽幌線
2 深名線
3 美幸線
4 歌志内線
5 上砂川線(函館本線上砂川支線)
6 札沼線(新十津川‐石狩沼田間)
7 幌内線
8 万字線
9 登川線(夕張線紅葉山―登川間)
10 手宮線
11 岩内線
12 瀬棚線
13 松前線

主要参考文献/地形図一覧/地名・施設名索引/駅名・鉄道関連索引

《特別付録》
1)復刻版「北海道鉄道地図」(昭和37年、札幌鉄道管理局)
2)特製リーフレット(書き下ろし自伝エッセイ、略年譜、著作目録収録)

「はしがき」より

 平成26年(2014)に『北海道 地図の中の鉄路』を書いたあと、次は「地図の中の廃線」だなあ、と、薄々考えていた。出版社のほうも、表立っては言わないとはいえ、同じ思いがあるように見えた。
 単に廃線の歴史、というだけならば、専門的あるいは半専門的な記事の書き手は私などよりははるかに適任な方々が、たくさんおられるだろう。従って私が書くとすれば、一つは「地図の中の廃線の姿」、二つには「地図を手に廃線跡を歩いた話」、にどうしても重点が置かれることになる。
 もっとも廃線跡の探訪書ならば、これまた数多い。しかし彼等の探訪手段はもっぱらクルマに限られ、廃線跡そのものの上を足で歩く人は稀である。幸い旧国鉄およびJRの廃線跡に話を限るならば、私は少なくともそれぞれの一部を、地図を見ながら足で歩いた経験がある。だから、それらをまとめて一本にすればよい、と考えた。
 ただし、前著に廃線以前の姿を紹介した江差線の木古内-江差間と留萌線の留萌-増毛間、及び廃止前に貨物専用線となった線(たとえば函館本線の美唄-南美唄間)は、手宮線のみを例外として、本書では省いた。
 もし本書の出版が、鉄道ないし廃墟の風景が好きな方々にいくらかでも歓迎されるならば、著者冥利に尽きることである。

著者プロフィール

堀淳一(ほり・じゅんいち)
1926年、京都府に生まれ、1935年、札幌に移住。北海道大学理学部卒業後、同大学低温科学研究所助手等を経て、物性物理学・統計力学・数理物理学を専攻。理学博士。1980年まで同大学理学部教授として主に物理の研究・教育に従事。同年、人生二毛作に向けて大学を退職し、エッセイストに転向。1990年、建設省(現国土交通省)国土地理院長表彰を受賞。2017年11月逝去。
小学生のころから地図の美しさに魅せられ、放浪を趣味とする。1960年代より地形図を手に全国の旧道、廃線跡、産業遺産などを歩く旅をスタート。地図と旅の愛好者の集まり「コンターサークルS」を主宰。現在も各地を精力的に歩き続ける。1972年、『地図のたのしみ』(河出書房新社)で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。北海道大学名誉教授。
『地図を歩く』(河出書房新社)、『地図のワンダーランド』(小学館)、『地図で歩く古代から現代まで』(JTB)、『消えた街道・鉄道を歩く地図の旅』『にっぽん地図歩きの旅 古道、旧道、旧街道』(ともに講談社+α新書)、『忘れられた道 完』(北海道新聞社)、『サッポロこぼれある記―北の街の空のひろがり』(そしえて)、『エントロピーとは何か―でたらめの効用』(講談社ブルーバックス)、『地図の中の札幌』『北海道 地図の中の鉄路』(ともに亜璃西社)など、地図・鉄道・旅行・物理学に関する著書は100冊を超える 

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