2013年7月27日、全道書店で発売!

 

歴史を愉しむブックガイド
時代小説で読む!北海道の幕末・維新

鷲田小彌太/著

本体1,600円+税
四六判ソフトカバー
176ページ
ISBN 978-4-906740-06-2 C0021

読む、愉しむ、わかる、北海道の歴史

  • これまで中央に目を向けてきた北海道人が、いま、自らの足元に目を向けはじめています。そうした読者へ向けて、「時代小説を読みながら、北海道の幕末・維新を知る」ことができるブックガイドが誕生しました。
  • 歴史ファンに人気の高い、北海道の幕末・維新期を舞台にした時代小説を、北海道出身作家の作品を中心に幅広くピックアップ。物語を愉しみながら、歴史的経緯や時代背景を知ることができる時代小説を紹介した、新しいスタイルのブックガイドです。

「Ⅰ 豊饒なり、幕末蝦夷・北海道の時代小説」より

 本書でわたしは、北海道の幕末を舞台にした時代小説の紹介を、北海道出身作家の作品にことのほか注目して行おうと思う。理由は簡単だ。
 一つ目は、北海道出身の作家、道産子作家がすぐれた幕末時代小説を書いており、しかもその中に幕末の北海道を舞台にした作品がかなり含まれているにもかかわらず、この事実があまり知られていないからである。
 (中略)
 二つ目は、北海道出身であるわたしの、根っこのところにあるナショナリズム、なかなか複雑な郷土愛につながっている。この愛ゆえに、道産子の手になる道産の知的財産をより大事にしたいという誘惑は、避け難いからだ。
 (中略)
 三つ目は、北海道出身作家の手になる時代小説を、北海道の知的財産として積極的に評価し、北海道の文学に幅と厚みをもっと持たせてみたいという思いが、常にわたしの念頭から去らないことにある。
 (後略)

誌面では書影のほか、小説で取り上げられた歴史上の人物や 作家のプロフィールを、脚注として紹介しています

著者プロフィール

鷲田小彌太(わしだ・こやた)
1942年札幌生まれ。札幌南高を経て、大阪大学文学部哲学科卒、同大学大学院博士課程満期退学。三重短大(法経科)教授を経て、1983年札幌大学教授(哲学・倫理学)、2012年退職。専攻は哲学・思想史。1991年、『大学教授になる方法』がベストセラーに。書評、評論、人生論、読書術、時代小説等、ジャンルをとわずに執筆する。主著は『大学教授になる方法』『昭和の思想家67人』『漱石の仕事論』『本はこう買え!こう読め!こう使え!』『現代思想』『ビジネスマンのための時代小説の読み方』『時代小説に学ぶ人間学―寝食を忘れさせるブックガイド』『佐伯泰英大研究』『坂本竜馬の野望』『定年と読書』『なぜ、北海道はミステリー作家の宝庫なのか?』『夕張問題』『失われざる1990年代―鷲田小彌太書評集成 Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ』『父は息子とどう向き合うか』等々、著作は200冊以上を数える。

目次

序 時代小説の中の蝦夷・北海道
I 豊饒なり、幕末蝦夷・北海道の時代小説
 1 時代小説で「歴史」を味わう
 2 花村萬月『私の庭』―蝦夷から北海道への「転生」記
 3 道産子作家の時代小説を中心に
 4 不破俊輔『シーボルトの花かんざし』―蝦夷幕末前夜のスペクタクル
II 敗者と勝者
 1 子母澤寛『蝦夷物語』と「厚田日記」―「敗残者」がゆく
 2 安部公房『榎本武揚』―奇妙なり、武揚
 3 佐々木譲『武揚伝』―なぜ「蝦夷独立」はならなかったのか
 4 三遊亭円朝「椿説蝦夷訛」―蝦夷・幕末時代小説かくはじまりき
 5 丹羽文雄『暁闇』―時代小説は「現代」を映す
 6 蜂谷涼『へび女房』―巧みにエピソードを嵌め込んで
   [コラム] 開陽丸の謎―綱淵謙錠『航』
   【エッセイ】 「幻」の北海道独立論
III 北辺の防備とアイヌ
 1 原田康子『風の砦』―北辺の防備にまつわる人間ドラマ
 2 綱淵謙錠『狄』―樺太領有興亡史が生んだ「流民」
 3 村上元三「蝦夷日誌」と『颶風の門』―蝦夷開拓の本道とは
   [コラム] 時代小説の「文体」
   [コラム] ロシアに脱国した日本の「密偵」
IV 開拓の礎―流離と新天地
 1 船山馨『お登勢』―馬産地「静内」前史
 2 本庄陸男『石狩川』―移民開拓団の「武士魂」
 3 寒川光太郎『サガレン風土記』―流刑地・樺太開拓
   [コラム] 『石狩川』は「転向」文学である
   【エッセイ】 時代小説が変える歴史の「見方」
V 探検家、冒険者たち
 1 佐江衆一『北海道人―松浦武四郎』―探検家・武四郎の「全貌」
 2 中津川俊六『北方の先覚 松浦武四郎伝』―「志士」武四郎
 3 吉村昭『間宮林蔵』―新奇心と功名心
 4 北方謙三『林蔵の貌』―剛毅な強者としての林蔵
 5 三浦綾子『海嶺』―帰国できなかった漂流者たち
   【エッセイ】 蝦夷の探検者たち
VI 箱舘戦争・異聞
 1 富樫倫太郎『箱館売ります 幕末ガルトネル事件異聞』―蝦夷、売ります
 2 久保栄『五稜郭血書』―紋切り型の箱舘戦記
 3 吉川英治「函館病院」―箱舘戦争サイドストーリー
   [コラム] 富樫倫太郎・箱舘戦争三部作
   【エッセイ】 甦る幕末のヒーロー・土方歳三
VII 松前藩・逸聞
 1 宇江佐真理『憂き世店 松前藩士物語』―望郷・松前藩
 2 藤井邦夫『歳三の首』―幕末の松前藩が抱えた両義性
 3 土居良一『海翁伝』―松前藩の起源を問う
   [コラム] 永倉新八―新選組最後の生き証人の「幸運」とは
VIII エンターテイメント
 1 佐々木譲『黒頭巾旋風録』―正義の味方、黒頭巾がやってきた!
 2 矢野徹『カムイの剣』―時代考証の行き届いた幕末冒険譚
 3 朝松健『妖変! 箱館拳銃無宿』―箱舘租界の仕置き人
 4 颯手達治『若さま秘殺帳』―もう一つの「若さま」捕物帖
   [コラム] 佐々木譲と幕末活劇四部作
補 蝦夷・北海道の幕末時代小説をさらに楽しむために
  1 蝦夷・北海道の歴史を知る
  2 司馬遼太郎の幕末時代小説を参照して
  3 豊穣なり、北海道出身作家の時代小説
  4 こんな作家にこんな時代小説を書いてほしい